甘いものの素晴らしさ


「ど、れ、に、し、よ、う、か、な」
「旦那ァ、まだ決まんねーんですかィ?」
「あのな、総悟くん。喫茶店でメニューを選ぶってこたァ、銀さんにとっちゃ死活問題なんだよ!」
「そうでしたねィ。でもいい加減待ちくたびれたんでさァ」

小さく溜め息を吐き、沖田はゆっくりと店内を見回す。
クラシックがかかったこの喫茶店は、最近出来たばかりで染み一つ見当たらない。
頬杖を突き、窓から外の景色を見やれば、遥か遠くに屯所が見えたので、沖田はすぐに視線を店内に戻した。

「休みの日まで、思い出したくないでさァ」

流石豊富なメニューが売り、というキャッチコピーなだけあって、目の前の大の甘党、銀時が頭を抱えて悩むほどの色とりどりのデザートがメニューの上で躍っている。
パフェを選ぶことに夢中で自分の話などちっとも耳に入っていないであろう銀時に、沖田はもう一度溜め息を吐いた。
相変わらず、自分はどこへ行っても大抵コーヒーだ。
銀時の甘いものや土方のマヨネーズのように、食べ物への執着心などまるでない沖田には、健康を害してまでそれらを食べようとする二人の気持ちがさっぱりわからない。

「旦那は、何で甘いものが好きなんですかィ?」

よし、決まった。南国風トロピカルパフェだ! と、メニューに一番大きく載っている南国フルーツをふんだんに使ったパフェを指差し、銀時が顔をあげた瞬間、沖田は訊ねる。
少々不意打ちなその質問に、銀時が首を傾げると、沖田は更に言葉を続ける。

「糖尿のケがあるなら、控えた方がいいんじゃ……」

銀時は、愚問だな、とでも言いたげに笑うと立ち上がり沖田を見下ろすと店員を手招きする。

「おねーさん。トロピカルパフェ一つと、チョコパフェ一つ」
「はい、かしこまりました」
「ちょっと待ってくだせェ。俺ァチョコパフェなんか」
「甘いモン食ってっと、幸せになんだろ。銀さんは総悟くんにもそれをわかって欲しいわけ」

自慢げに言い終わった銀時が腰を下ろすと、沖田はまぁいいか、と小さく頷いた。
甘いものは特別好きではないが、カツ丼土方スペシャルよりは食えるに決まってる。

「総悟くん、どうだった?」
「ちょっと俺には甘すぎやした」

終始満足気にトロピカルパフェを食べ終わった銀時が沖田に訊ねると、沖田は少し残念そうに答える。

「そうか。まー銀さんこんくらいじゃへこたれないから! いつか絶対総悟くんに甘いものの素晴らしさを!」
「わかってやすよ?」

拳を握り、普段腐った魚の目をしている銀時の目が、珍しくきらめいたとき、沖田は銀時にしれっとそんな言葉を投げた。

「えェェェェェェェ! もうわかっちゃってんの?」
「甘いモンは正直そんなに好きじゃーねィですが。俺にとって大事なのは何を食べるか、よりも誰と食べるか、ってわけで」
「で?」
「旦那と食べるなら、俺にとっては何だって旦那にとっての甘いものなんでさァ」
「総悟くん!」

照れ臭そうにうつむく沖田の頭をわしゃわしゃと撫で、銀時は嬉しそうに笑った。
それ以降、銀時が沖田に甘いものを勧めることはなく、沖田も相変わらずコーヒーを頼み続けた。
しかし二人の間にはいつも、甘い空気が流れているのだった。








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捏造にもほどがあるぜよ!
こんなに素直なの沖田さんじゃないやい!
中身のほうは、正直すいません。
自分でもサムイです 笑



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