「雨・・・」
犬飼はぽつりと呟いた。

「犬飼くん、今日は何かあるのですか?」
辰羅川は犬飼の言葉に反応して尋ねた。

「別に」
そっけなく答えるのはいつものことだ。



君と雨の憂鬱を
昼前から降り出した雨はグラウンドに大きな水溜まりを作っていた。 放課後になっても止む気配はない。 生徒たちはまるで校舎の中に閉じ込められたような窮屈さを感じる。 野球部の部員はなおさらだ。 外での練習が出来ないため今日は室内練習。 しかも他の部活も加わってあまりスペースもない。 それでもじめじめした校舎の中で一生懸命練習した。 バットはさすがに振り回せなかったが。 いつもより早い時間に練習が終わると、部員たちは帰宅の途についた。 「辰・・・、忘れ物した」 部室から出て少ししたところで犬飼が言った。 「ではここで待っています」 律義な辰羅川は当然のようにその場に立ち止まる。 「いーから、先帰ってろ」 犬飼は呆れたような表情で校舎の方に向きを変えた。 この後、辰羅川がすぐ帰ったのかやはり待っていたのか犬飼は知らない。 校舎に残された忘れ物はなかなか手強いものだったから。 「司馬」 呼び掛けられた相手は教室の1番窓側の列の机に座ってじっとこちらを見つめ返してきた。 「・・・その、窓から見えたから」 サングラスに隠された見えない瞳に見つめられて犬飼はなんとなく言い訳をする。 「・・・・・・」 しかし相変わらず机の上の司馬は喋ろうともしないし動く気配もない。 「なにしてんだ?帰らねーの?」 犬飼がどんなに一生懸命話し掛けても答える気はないらしい。 仕方なく犬飼は教室に入り、司馬に近付いた。 よく見ると雨なのに少し開けられた窓が目に入った。 その隙間には白い煙が吸い込まれていく。 司馬は向かってくる犬飼にも表情を変えない。 それどころか持っていたタバコを慣れた手つきで吹かしてみせる。 「シバくんファンの女達が見たら泣くぞ?」 犬飼は溜息交じりで言った。 すると突然司馬は立ち上がり犬飼の顔ギリギリまで自分の口を近付けた。 「犬飼に言われたくない」 やっと発せられた言葉は呆気なく煙草のニオイを残しただけ。 司馬の尤もな発言に犬飼は一瞬躊躇う。 だが一呼吸置くと司馬の手を掴み煙草を抜き取った。 「見つかったら野球できなくなるぞ」 「それは困る」 司馬はこう言いつつも犬飼の手から煙草を取り返す。 そしてまた口を半開きにして煙草を誘う。 だがくわえる直前に犬飼が再びその手を掴む。 「身体にもよくないだろ・・・」 司馬の手を掴んだまま沈黙が続いた。 2人とも目線は逸らしている。 ザァ− 少しだけ開けられた窓からする雨音がやけに大きく耳障りに感じた。 「・・・。オレが死んだら悲し?」 突然司馬が口を開いた。 「当たり前だ」 間髪入れず犬飼は答えた。 「じゃあ、それで満足だよ」 逸らしたままの視線をさらに下に向け、床を見つめたまま淡々と呟く。 「そうじゃなくて!」 犬飼の大きな声に司馬は一瞬ビクッと身体を反応させた。 「雨の日以外は吸わないから。野球が出来ない日はこれがないとやってけない」 ちょっとだけ笑った司馬の顔がいじらしくて犬飼は何も言い返すことが出来なかった。 「大丈夫。今度はもっと目立たないとこで吸うよ。犬飼に見つからないように」 沈黙が数秒続いた後、犬飼はゆっくりと司馬を見つめた言った。 「それはムリだ。探し出して捕まえてやる。大事だから、アンタのこと」 司馬の目が見開いた。 ドクンドクン 心臓の音が雨の音を忘れさせるくらいに思える。 「待ってる」 「おぅ。絶対見つける」 雨の日は憂鬱だ。 けれどそれは愛しい君を見つけるまでの雨降りだ。 ほらまた空が君を誘う。 ++++++++++ 西川様に相互御礼として捧げたい『シリアス犬馬SS』です。 どこがシリアスなのかは私にも分かりません(滝汗)。 タバコネタならきっとシリアスになると思い込んだところ全く方向がズレてきました・・・。 シリアス好きな西川様には申し訳ないです。 このような駄作ですが受け取っていただければ幸いです! では相互リンク有難うございました!!
++++++++++ えぇ、悲しいですとも!!!!
すみません…取り乱しました。
頂いちゃいましたよ!?ボナペティのPOMME様よりシリアス犬馬!!!!
ヤヴァいです。
灰色葵たん大好きです!!
司馬くんが可愛すぎて、むしろ犬飼くんのかわりに西川が探して拉致りたいです。
てか、拉致ります!!大好きなのです。
灰色で煙草すっちゃうような、ちょっと生意気な司馬きゅんが!!!!
POMME様、西川のツボにメガヒットな司馬きゅん犬馬&相互、本当にありがとうございました。
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