別々


一個のものになれればきっと楽だよ。
喋らなくても想いは通じる。
触らなくても触れ合っている。
重ならなくても元々一つ。
ねぇだけどどうして。
一個になりたいと思えないんだろう。

「めいー、朝ご飯何にする? って、聞くまでもないか」

僕は食パンをトースターに入れて、冷蔵庫からコーヒー牛乳を出してコップに注いだ。
すっかり手馴れた冥の朝食の準備に、少しだけにやついて自分の分のカロリーメイトを棚から漁る。

「あ、おはよ」
「あー」

ようやくやってきた冥の前にこんがり焼けたトーストとマーガリンとコーヒー牛乳を出す。
半分寝ているような状態でそれに手を伸ばす冥を、僕はぼんやりと見つめていた。

「ねぇ、冥」
「とりあえず、何だ?」

冥の目は半開きで、返事だって何だかおざなりだ。
きっと寝ぼけて僕の言葉なんて耳に入ってないんだろう。
だから今、言っておこう。

「冥と付き合う前はさ、冥と一個になりたくて。ほら冥って何考えてるかわかんないしさ。そう思ってたけど」
「あー」
「やっぱり、別々の方がいいね」
「とりあえず、何でだ?」
「聞いてたの? じゃあ、秘密」
「オイ、何でだよ。気になるだろうが」
「聞いてないと思ったから喋ってたのに」

僕は喉まで出かかってた言葉を飲み込んで、ふふふ、と笑った。
冥は何だか理不尽そうだったけど、僕につられて笑う。
だって一個だったら今、こうして笑う冥だって自分じゃ見られないわけで。

「とりあえずオレは別々がいいけどな」
「どうして?」
「二人だから、いいんだろ」

冥は、恥ずかしそうにそう言うと、食べ終わった食器を持って台所へ行ってしまった。
僕は冥の赤く染まった顔を思い出して、もう一度笑った。
そしてやっぱり別々でよかったと思った。




++++++++
バカップル大好き!



戻る


SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送