ぼくらはさいごのキスをする


「もし、もしですよ? 明日世界が終わるとしたら沖田隊長はどうします?」
「いきなり何なんでさァ」
「ちょっと訊いてみたいなって思って」

山崎の突然の質問に、沖田はんんん……と考えるふりだけしてすぐにそっぽを向いた。
少々不自然に思える沖田のその行動に、山崎はつつつ、と膝を擦りながら近寄り、沖田の顔を覗き込む。

「そんなの、考えたこともねェや」

しかし沖田は、山崎が表情を確認するより先にくるんと向きを変え、再びその表情を隠してしまう。
そしてまた一歩、山崎が沖田に踏み込めば、やっぱり沖田は顔を隠した。
山崎が進めば、沖田が隠す。
言葉のない攻防戦がしばらく続き、ついにムキになった山崎が沖田の肩をぐいと掴むと、真っ赤に染まった沖田の顔が露わになった。

「沖田……隊長?」
「だから、嫌だったんでさァ」

今まで見せたこともないその表情、というより、こんな顔ができるだなんて考えもしなかった沖田の表情に、山崎の瞳が歓喜でぶるぶると震える。

「何か、思ってくれたんでしょう?」

何だかいつもと立場が逆だ、と思いながら、山崎が沖田に訊ねれば、沖田は仕方なく口を開いた。

「きっと、山崎と一緒に居るんだろうなって思っ……」

沖田が言葉を言い終わる前に、山崎が沖田の顔を自分の胸に押し付ける。

「何……っ」

そして山崎はにっこりと笑って口を開いた。

「沖田隊長、キスしましょう」
「は? 何言ってるんですかィ?」
「だから、キス、しましよう」
「やばいですぜ、近藤さーん。山崎の頭がイカ……モガ」

大声を出し、近藤を呼ぼうとした沖田の口を慌てて塞ぎ、山崎は、シーッと唇に指をあてた。
柱にもたれた沖田と、沖田の口を塞ぐ山崎。
思いがけず近付きすぎてしまった顔に、二人は同時にふっと目を反らした。

「で、何でキスしたいんですかィ?」
「俺はさいごのさいご、沖田隊長とキスしてたいですから」
「山崎ィ」
「何ですか?」
「やっぱりアンタの頭はイカれてまさァ」

沖田はそう言ってくくく、と笑うと山崎の隊服をぐいっと引っ張った。

「さいごだなんて、言わせやせんぜ」

そしてそのまま唇を重ねると、呆然とする山崎にまた一つ、悪戯気に笑った。









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やっぱ山沖好きだなぁ。




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