カラフル


例えば、俺がどれだけ土方さんのことを想ったって、それに何の意味があると言うのだろう。
アンタと居ると生まれる、俺の中の色、闇、虹色の波。
全部混ぜて、ぐちゃぐちゃにして、見せ付けてやりたい。
何もかもをこの手で汚せば、あんたは振り向いてくれやすか?

「ひじかたさん」

何も言わずに俺の前を通り過ぎようとする土方さんの裾を掴んで引き止めた。
気付いているくせに、知らないふりをするあんたはずるい。

「何だ?」

面倒くさそうに返事をするその声も。
俺を見るつり上がった目も。
着物から覗く首筋、骨ばった手、大きな背中、太い腕。
あんたをかたどる全部が、俺を惑わせるものでしかないってこと、気付いててあんたはそんな顔して俺の前に立つんですねィ。
土方さんの全てが、色を持って俺に襲い掛かる。
色づかせた癖に。
今更要らないなんて、言わないで。

「嘘なんかじゃないですぜ、この間のこと」

俺の言葉に、土方さんは動揺する様子もなく、俺のいっとう好きないつものポーカーフェイスで俺を見た。
身体の奥が、ぞくりと震えた。

「総悟、俺はお前の……」
「その先は、聞きたくありやせん」

震える声で呟けば、土方さんは困ったような顔をして頭を掻く。
何も、知らなかった。
アンタに出会わなければ。
アンタさえ、好きにならなければ。
空の青ささえも。
太陽の眩しさすらも。
きっと俺は気付かず過ごしていたのだろう。
アンタと出会って俺の世界は色付いて。
アンタを好きになって、俺の全てが色付いた。

「もう一度だけ、言わせてくだせェ」

喉が震えた。
自分の身体は自分のものではないようだった。
足が竦んで立っていられない。
どうして。
何をこんなに。
怖がっているのだろう恐れているのだろう。
死線だって、何度も潜り抜けてきた。
神に背くことも理不尽としか思えないことも、何だってやってきた。
こわいものなどなにもないのだと。
今まで思ってきたというのに。
それなのに、どうして。

「抱いて下せェ。アンタじゃなきゃ、鎮めらんねェ」

ただ、心全部で身体全部で求めている人に自分の想いを告げることを、どうしてこんなに恐れているのだろう。
言葉を一つ紡ぐたび、身体中が熱くなって、喉の奥から競り上がる気持ちに涙が出そうになる。

「総悟、俺はお前のことをそういう目では見れねェし、これからも見るつもりはねェ」

冷静すぎる土方さんの声は、俺の心臓を打ち抜いて何処か知らないところに行ってしまった。
もう何も聞こえない何も見えない。
鮮やかに色づいた俺の世界は、一瞬にしてモノクロに染まる。
何も答えない俺の顔を覗き込む土方さんのスカーフを掴んで近付いた。
返して、俺の色。




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銀魂片恋祭りに参加させていただきました。

Better half/西川柚子


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