脳内CPU


がたん、と椅子が床に倒れた。
いつからか制御できなくなった、僕の中のイカれたコンピューターが欠けた部品を探してる。

「キス…してもいい?」

ワケがわからない、とでも言いたげな犬飼の瞳の奥が鈍く、光る。

「…え?」

犬飼の上に馬乗りになって、両手で頬に触れた。

「司馬?」

僕は、ゆっくりとサングラスを外す。
このコンピューターが壊れてしまったのは、いつだったろう。
犬飼と出逢ってからだってことは、確かなのだけど、思い出せない。
視線が、絡まる。
頭の中が、ショートする。

「とりあえず、どうかしたのか?」

そんな下らないこと、聞かないで。

「止まら…ないんだ。ごめんね…好きすぎて、止まんないや」

わかりきったことだ。
こんなの、僕じゃない僕じゃないのに。

「犬飼…」

脳が命令を送ってしまう。
神経が勝手に動き出す。

「…すき」

僕は、ゆっくりと、軽く犬飼の唇に自分のそれを押し当てた。
唇を離すとき、ふと合ってしまった視線を強引に反らし、犬飼の上から降りる。
未だ、転がったまんまの椅子。
広がったまんまのノートが風に揺れている。

「…ごめんね」

背中を向けて謝った。
壊れた心臓への回路が、出鱈目な速さで鼓動を鳴らした。
もう、取り返しがつかない。
処理しきれない気持ちが溢れ出す。
こわれたコンピューターのせいにしたって、意味がない。

「気に…すんな」
「え?」
「とりあえず、別に嫌じゃなかったから。驚いたけど」

犬飼は、制服についた埃を払いながら、立ち上がった。

「司馬だからかも、しんねーな」

犬飼は、そう言って軽く笑うと僕の手を掴んで、僕を立たせる。

「部活、行かねーのか?」
「…行く」

多分もう、完全に壊れてる僕のコンピューターが、どうにか言葉を紡ぎだす。

「とりあえず、もう少し考えさせてくれ。多分、答え出るから」
「何の?」
「すき、の返事」
「あ…。…うん」

イカれた僕の頭でも、何かが進んだことは、かろうじてわかった。
きっともう、どんな神経も、犬飼しか映さない。
犬飼のコンピューターも、僕が壊してあげる。
僕しか、映さないように。
欠けた部品を、二人で探そうよ。










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犬馬のときは、こんくらい積極的な司馬くんが好きです。




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