ひっかき傷
僕はまだ、霧咲さんの前で、言葉を発したことがない。 まぁ、声を出したことはあるのだけれど。 霧咲さんも、口数が少ないから、僕らはまともに会話をしたことがない。 ゆえに僕らはいつも、身体で会話する。 「んっ…あぁっ…やっ…あぁっ…ん」 行為自体は嫌いじゃない。 言葉のない僕たちだから、こうしてる時が唯一、繋がってるって感じるし。 「時間 帰宅」 だけど、霧咲さんは寮の門限が厳しいのか、行為が終われば、すぐに帰ってしまう。 その後に訪れる淋しさは相当な物だ。 たった一人きりで僕はいつも、音のない空間にただ、寝転がる。 もっと、傍に居たいのに。 居てくれない霧咲さんと、居られない学校の事情。 淋しい…けど、仕方ないや。 だなんて、言い聞かせて。 僕はいつも、小さく溜め息を吐く。 でも、今日は違う。 「やっ…ソコ、だめえぇっ。あっ…あぁぁ…っ」 ガリリ、と霧咲さんの背中に、淋しいって言葉の代わりに爪を立てる。 無意識の内に、じゃない。 僕は立派な確信犯だ。 霧咲さんの身体に、僕だけの印を。 しばらくして、僕たちはほぼ同時に果てた。 「背中 傷」 霧咲さんは、僕が付けたひっかき傷を摩りながら、痛そうに顔をしかめる。 僕は、その手に自分の手を重ねる。 「今度 注意」 僕は、小さく頷いた。 傷消えるまで、僕のこと忘れないで。 消えてしまっても、またすぐに付けてあげるから。 無意識のフリをして、会えないあなたに僕の痛みを。 少しだけど、わけてあげる。 霧咲さんが口寂しそうにチュッパチャップスに手を伸ばす前に、僕はその手を取って、口付けた。 心が、ひっかかれたように痛かった。 つけたばかりの傷が、僕の我が儘で赤く腫れていた。 ++++++++++ 初の雀馬。雀くんの喋り方がおかしい。 てか確信犯って、本当は使い方違うんでしたっけ? まぁいいや。
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