踏み込めない


「いつまでそうしてるつもり?」

ねぇ、そんな顔しないで、こっち向いて。
笑顔を見せて。

「ぼく、悪いことしたつもりなんてないからね」

想いが通じ合ったって、踏み込めなきゃ、歩み寄らなきゃ意味ないじゃん。

「シバくん」

恥ずかしがりやな君は、そうやって僕にだって壁作って、一生踏み込ませないつもりなの?

「兎丸が……っ、キス……なんてするから……っ!」

ようやく聞けた返事はか細い声の後ろ向きなそんな答え。

「するよ、だって好きだもん」

好きだから、触りたいしキスだってしたいし。
それってそんなに悪いこと?
おかしいことじゃないよ。

「シバくんは、ぼくのこと好きじゃないの?」
「そうじゃ……ないけど」

ぼくは、君の人生に踏み込みたいのに。
踏み込んで、踏み荒らして、一人で歩こうとするシバくんに、ぼくと歩く道を作ってやるんだ。
ぼくは、ゆっくりとシバくんに近寄ると、後ろからぎゅうっと抱きついた。

「驚かせちゃったなら、謝るよ。でもぼくはシバくんが好きだから。好きだから触りたいしキスだってするんだからね!」
「うん、わかってるんだけど。ごめんね」

僕はまだ、まだまだまだ言い足りなかったけれど。
そう言って振り向いてくれたシバくんの笑顔があまりにも可愛かったもんだから。

「ううん、もういいんだ」

簡単に折れてしまった。
相変わらずぼくは、シバくんに甘いなぁ。





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