居心地


無涯さんの髪の毛はとても硬い。
自分の膝に頭を乗せ、気持ち良さそうに眠る屑桐を見ながら、司馬はそんなことを思った。
細い指を真っ黒な髪の毛に絡ませて、明らかに自分の髪質と違うそれにとてつもなく幸せな気分になる。

「無涯さん」

そろそろもう、日も暮れてきたというのに、司馬の膝がよほど寝心地がいいのか、屑桐は一向に目を覚まさない。
電気もつけていない薄暗い部屋に、カーテンの隙間から、うっすらと夕日が差し込んでいる。
投げっぱなしの学生鞄。
投げっぱなしの学ラン。
二つ重なったそれが嬉しい。
何でもない、こんな夕方が嬉しい。

「そろそろ、起きてください」

司馬が屑桐を小さく揺すれば、屑桐はむにゃむにゃと言葉にならない声を発する。

「無涯さんっ」

もう少しだけ大きな声で司馬が呼べば、屑桐はガンッと大きな音を立て、司馬の膝から滑り落ちた。

「大丈夫……ですか?」
「オレは寝ていたのか?」

心配そうに訊ねる司馬をよそに、屑桐は寝ぼけ眼で訊ね返す。

「えぇ、そりゃもうぐっすりと」
「すまなかったな。つまらなかっただろう?」

覚醒し出した屑桐がようやく気の利いた台詞を送れば、司馬は少し恥ずかしそうにこう言った。

「いえ、あの……寝顔見てたら、直ぐでしたよ」

その言葉に、同時に顔を赤くした二人は、少々ぎこちなく距離を取り、小さく笑い合う。

「長居しすぎてしまったようだな」

屑桐は床に散らばったままの鞄と学ランを取り、照れ臭そうにそう言った。
司馬も自分の分の鞄と学ランを拾い、いつもの場所へ片付ける。

「ここは、居心地が良すぎて困るな」

帰宅する屑桐をマンションのエントランスまで送りにきた司馬が少し淋しそうに手を振ると、屑桐は笑って司馬の頭を撫でた。

「帰りたくなくなってしまう」
「帰らないでください……って言ったら。困りますか?」

屑桐は辺りに誰も居ないのを確かめると、司馬を軽く抱き締めた。

「葵は、オレを困らせるのが得意なようだな」
「そういうつもりじゃ……」

二人は一瞬だけ口付けを交わすと、またマンションの中へと戻っていった。
屑桐は、居心地が良すぎるのも困りものだな、と思いながらも、司馬の手をきつく握った。








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王者華武のエースピッチャー、屑桐無涯の知られざる放課後 笑 がテーマです。
嘘です。
ほんわかした屑馬が書きたかっただけです。
屑桐さんは司馬くんと居ることで普段の疲れやストレスから癒されてたら萌える。



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