アイワナビーヒューマン



「ねぇ、僕の声ちゃんと聞こえてる?」

喉を絞って出した声は、どうやら届かなかったみたいで、目の前に居る屑桐さんはゆっくりと首を振った。
きっと、何の音も発せず、口をぱくぱくと開くことしかできない僕は、酷く滑稽な生き物だ。

「魚のような僕を、どうして愛してくれるの?」

相変わらず音を紡がない口をぱくぱくと開いて訊ねては見たけれど、屑桐さんはわからないのか小さく首を傾げた。
強い目で僕を射抜く屑桐さんは、とてもとても真っ直ぐで健全で健康だ。
それとは逆に僕ときたら、なんて歪んでいて不健全で不健康なのだろう。
ねぇ、聞いて。
聞いてよ、屑桐さん。
僕はとても淋しいんだ。
僕は仕方なく、いつものようにノートとシャープペンシルを取り出すと、一言淋しい、と書いた。
屑桐さんは、泣きそうな顔をして笑いながら、遠慮がちに僕を抱き締める。
僕は、ずるいと思った。
こうしてほしいばっかりに、いつも小さな嘘を積み重ね続けている。
屑桐さんを傷つけている一番の加害者の癖して、被害者のような顔してただ立ちすくむことしか出来ない。
淋しいのは、屑桐さんと居るからじゃない。
淋しいのは、被害妄想が激しい僕の心だ。
僕が嗚咽を漏らし始めると、屑桐さんは優しく僕の背中をさすり続けた。
ねぇ屑桐さん、僕らの距離は、一向になくならないね。
そして僕の声は、一体いつになったら届くんだろう。
想い慰めるキスもセックスもできないまま、僕らはただ傷を舐めあい続けている。
強いはずの貴方が本当はとても脆いこと、僕を抱き締める手の震えで知ってたはずなのに、気付かないふりしてごめんなさい。








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何ていうか、こんな話ばっかりをずっと書いてたい。
気分的に無理なんだろうけど。



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