着せ替え葵ちゃん2
本日7月25日は、猿野の誕生日。
二人で過ごす約束をしていた猿野と司馬は、仲良く向かい合い、ケーキを食べながら、
「誕生日…おめでと」
「おお、サンキュ」
などと、微笑ましい会話を交わしていた。
しかし、この幸せな時間も、
[誕生日は何でも我儘を聞いて貰える日]
だと、誕生日の意味を大きく履き違えている猿野によって、
もろくも崩れ去ってしまう事を、誰が予想できたであろう。
いや、予想できやしない(反語)。
この話は、コスプレさせる事に命を賭けた男、猿野天国と。
その犠牲となった恋人、司馬葵。
2人の愛と感動の物語である(大袈裟)。
「はい、天国、誕生日プレゼント」
「開けていいか?」
(こく)
綺麗にラッピングされた包みを少し乱暴に開くと、そこにはずっと欲しかったゲームソフト、
「マジサンキュー!!すっげぇ嬉しい!!」
「喜んでくれて…良かった」
嬉しそうに笑う司馬を見つめ、猿野は口を開いた。
「オレも、葵ちゃんにあげてぇモンがある」
いつになく、真剣な猿野の眼差し。
「…何?」
「ちょっと待ってろ」
何だろ…それより、天国のあんな顔、珍しいなぁ。
やっぱりかっこいい。
既に、満足気な司馬。
しかし、[あげてぇモン]と言うのは、いつも使う言葉である[いいモン]のカモフラージュの為使った言葉であること。
これから猿野の持ってくる物が、司馬の許容範囲を大きく越えた物であることを、勿論司馬が知る由もない。
司馬は指輪だったらいいな…なんてほのかに甘い期待を抱きながら猿野を待っていた。
戻って着た猿野は、何やら大きな箱を持っている。
「何?」
「いーから開けてみろって」
ドキドキしながら箱を開けると、中に入っているのは、黒と白の服のような物。
司馬は嫌な予感を感じつつ、聞いた。
「これ…何?」
「メイドの服」
猿野は、思い切りいい笑顔で答えた。
「僕、絶っっっ対着ないからね!!」
甘い期待はどこかに消え去り、セーラー服を着た時の事が、司馬の頭をよぎる。
あの時、猿野の口車に乗せられたばっかりに歯止めの利かなくなった猿野のせいで、次の日まともに動けなかったことや。
写真を撮られて未だからかわれる事を思い出すと、尚更着られない。
「何でだ?」
「こんなの…恥ずかしいに決まってんじゃん!!!」
普段、猿野の前でさえ滅多に大声など出す事のない司馬が、声を張り上げるだなんて、本当に嫌な証拠。
しかし、今日は猿野の誕生日。
運命は、猿野に味方していた。
「オレ、すげー楽しみにしてたんだ…葵ちゃんと初めて過ごす誕生日」
少し寂しそうに話す猿野に、司馬の心は揺れる。
そんな表情を見て、もう一息だと猿野は更に言葉を続けた。
「でも、葵ちゃんが嫌なら仕方ねぇよな、オレが我慢すりゃいい事だしな」
そうやって、残念そうに服をしまう猿野を見て、司馬は覚悟を決めた。
アノ服に抵抗はあるけれど…。
やっぱり大切な人の誕生日には、一番喜ぶ事をしてあげたい。
司馬の中で、その気持ちが、コスプレ嫌!!という気持ちを越えたのだった。
しかし、その覚悟のせいで、とんでもない事をやらされるハメになるのである。
やっぱメイドは駄目か〜と、服を戻しに行きかけた時、
「天国…」
司馬が猿野を呼び止めた。
「ん?どうしたんだ?」
「僕…それ…着ても…いいよ」
「え?…あ!?え〜っ!?い…いいのか?」
(こくん)
猿野のテンションは、一気に最高潮にまで上りつめた。
「葵ちゃん!!!!マジ大好きだぜ〜」
猿野は、司馬を思い切り抱き締め、顔中にキスをする。
「僕…着て来るね」
猿野は、服を持ち、部屋の外に出る為に立とうとする司馬の腕を取り、引き止めた。
「オレが着替えさせてやるよ」
「…それは無理」
「どうしても?」
(こくん)
「じゃあ仕方ねぇか…」
そう言って少し残念そうに手を離す。
そして、司馬がその言葉に油断した隙に、猿野は司馬に深く口付けた。
「んんっ…ふっ…」
長い長いキスのせいで司馬はぐったりと猿野の肩に額を乗せる。
猿野はその隙を見計らって、司馬のTシャツを器用に脱がしてゆく。
「ちょっ…天国ぃ…何っ…すんの!?」
「何って…着替えさせてる」
司馬の腕を黒いワンピースの袖に通しながら、猿野は答える。
ヤッベー…これだけでもマジ可愛い!!
「自分で…着替えるってば…」
司馬は弱々しい、今にも泣き出しそうな声で言う。
そんな声で言われてしまったら、さすがの猿野も、司馬のズボンのベルトを外そうとする手を止めた。
「わーったよ、そのかわり、グラサンは無しな」
サングラスを外されて露になった瞳は、やっぱり少し涙目。
少し良心が痛む猿野は司馬の頭を撫でてやり服を渡した。
そして、司馬は部屋から出る。
部屋の外で、司馬の着替える音がする度に、猿野の心臓は高鳴る。
あ゛〜もう覗いちまおうかな…。
でも嫌がってたしな…と猿野が迷っていると、
「あ…天国?」
と、部屋の外から司馬のバツの悪そうな声が聞こえてきた。
「どうしたんだ?」
「あの…ね…着方…わかんなくて。だから………着させて…くれない?」
「えっ!?いいのか」
「…うん」
猿野がドアを開けるとレースのエプロンを前に、途方に暮れる司馬の姿。
それはあまりに可愛くて、猿野は思わず襲ってしまいたい衝動に駆られた。
…がしかし。
「全部着てからだ」
そう呪文の様に唱えると、エプロンを着させる。
「出来たぞ〜」
「あ…ありがとう。あとは、自分で出来るから」
「わかった」
そして猿野は部屋に戻ると、
「何だよ…アレ…」
と、小さく呟き、ソファーにもたれかかった。
「アレはヤバいだろ…」
司馬のあまりの可愛さに、猿野の思考回路は完全にストップしてしまった様子。
そしてそのまま時間は流れ。
「…出来たよ」
と、ドアがゆっくりと開く。
赤く染まる頬。
袖から少し覗く指先。
短いスカートと長いソックスの隙間から見える、白く細い太腿。
その全てが、猿野の言葉を無くさせるには充分過ぎて。
「…天国…どう、かな?」
やっぱり、司馬の問いは聞こえていない。
何だコレ?
ヤバいだろ…ヤバすぎるだろ、犯罪並の可愛さだな…。
今なら捕まってもいいわ。
つーか多分、今なら死ねる!!
あっでももう少し堪能してから……。
そこでやっと、現実世界に戻ってきた猿野は司馬を座らせ、自分は立ち上がると、
「なぁ、上目使いで"ご主人様"って言ってくんねぇ?」
と、尋ねた。
「ヤだよ」
しかし、猿野の方を見て話すと、司馬は必然的に上目使いになってしまう。
「葵ちゃん、可愛すぎ。じゃあ"坊ちゃま、いけませんっ…"でもいい」
「……もっとヤだよ」
「まぁいいや…よっと…」
猿野は司馬を抱きかかえ、テーブルの上に座らせた
「な…何?」
そして不安そうに尋ねる司馬に優しく口付けると、靴下を脱がせ始める
「ちょっ…何・」
「せっかくプレゼントくれたけどよ、オレやっぱ、葵ちゃんが欲しいわ」
そう言うと、靴下を脱がせた足に、何度も何度も口付ける。
「ゃぁっ…ちょっと…あ…天国ぃっ、やめ…」
「"ご主人様やめて下さい"って言ったら止めてやるよ」
意地悪そうにニヤっと笑うと、猿野はそう言った。
「そんな…の…言えな…いっ…よ…」
「じゃあ、やめねぇ」
司馬は迷っていた。
このままじゃ、本当にどうにかなってしまいそうだ。
それに、丁度猿野の頭が司馬の足の間のすぐそばに有る為、この体勢は凄く恥ずかしい。
そしてとうとう、猿野の口付けは、腿の内側にまで来てしまった。
「ぁっ……んっ…ほんと…やめて…」
それでも猿野はやめない。
身体に力は入らない。
司馬にはもう、あの言葉を言う事しか選択肢は残されていなかった。
「ご…主人…様っ。やめて…下さっ…」
恥ずかしい。
こんなの言うくらいなら、皆に素顔見せる方がマシだ。
司馬の顔は耳まで真っ赤で、猿野を真っ直ぐ見れないらしく、右下に視線をずらしていた。
猿野は司馬の足にキスをするのはやめたが、なぜかそのまま動かない。
「天国のばかっ!!変態っ!!」
いつもなら
「変態上等っ!!」
と、襲いかかってくるはずの猿野。
「天国?」
しかし今日は、司馬を真っ直ぐに見つめるだけ。
「オレ、一生放さねぇからな!!葵ちゃんのこと」
「どうしたの…?いきなり」
「わかんねぇ!!けど、何か今すげぇ思った!!駄目か?」
(ふるふる)
司馬は首を振り、猿野の瞳を見つめて、言った。
「僕も…ずっと天国と一緒に居たい」
「やった!!!そうと決まればまず、新居探しだな!!」
「えっ!?」
「一緒に住んだら毎日ヤり放題だな〜楽しみだぜ」
「ちょ…天国?」
まだ一緒に住むとは言ってないんですけど。
司馬は、このまま猿野と付き合っていくのに一抹の不安を感じずにはいられなかったが、
幸せだからいいや、と猿野に微笑みかける。
しかし、その笑顔で、猿野のあとほんの少し残っていた理性は、あっという間に崩れ落ち、
そのまま司馬をテーブルの上に押し倒した。
「葵ちゃん、最高のプレゼント、サンキューな〜。んじゃ、いただきまっす」
猿野は、顔一杯に笑顔を浮かべ、幸せそうに笑った。
次は絶対にチャイナだ!!という野望を胸に抱いて。
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着せ替え第2弾、猿野くんのハピバ小説です〜
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