着せ替え葵ちゃん３



猿野の頭は朝からスリットで一杯だった。
今日の部活は午前で終り。
昼から猿野の家で会う約束をしている為、猿野はそれが楽しみでたまらないのである。
猿野の誕生日の翌日、
どうしても新居を探しに行きたいという猿野を、司馬は一緒に住む以外で何か一ついう事を聞く、という条件でどうにかやめさせた。
部活が終ると、子津の

「一緒に帰らないっすか？」

という言葉を無視し、

「シバくんは僕と帰るんだよ!!」

と寄って来た兎丸を放り投げ、猿野は司馬を連れてとにかく走った。
セーラー服の時も、メイドの時も、説得するのが大変だった。
しかし!!今日は違う!!今日は何の抵抗も無くチャイナドレスを着てくれるのだ(多分)。
考えるだけで顔がにやけてくる猿野。
二人は息を切らしながら猿野の家に着いた。
部屋の中に入ると、猿野は早速話を切り出した。

「葵ちゃん、言うこと一つ聞いてくれるって言ったよな？」
(こく)

猿野が聞くと、司馬は頷いた。

「じゃあ、チャイナドレス着てくれよ」

司馬の表情が一瞬にして固まる。
そして、荷物を静かにまとめ、部屋を出ようとした。

「オイ、何帰ろうとしてんだよ!?」
(ギクッ)
「ト…トイレ…だよ」
「荷物持って行く奴があるか!!」

司馬は猿野に手を引かれ、部屋の中に連れ戻される。

「もうコスプレは…ヤだ」

今までの事を考えればそれも当然の話である。

「言うこと聞いてくれるっつったじゃねえかよ〜」

司馬は今、一緒に住む事だけでなく、コスプレも条件から外すのを忘れていたを思いっきり悔やんでいた。
チャイナドレスだなんて、天国の事だから、片言の日本語を話せ!!とか言ってくるかもしれない…。

「いや、それはあんまり萌えねぇ」

「え？」

どうやら口に出していたらしい。 萌えないの意味はわかんないけど、否定形だから、片言の日本語は話さなくても良さそうだ。

「いいじゃねーか!!チャイナはスカートの丈長いしよ〜何もアン○ミラーズの制服着ろっつってるワケじゃねーんだし」
「そっか…じゃあ…着るよ」
世間知らずで可愛い司馬くんは、なんと!!
チャイナドレスにはスリットが入っているということを知らなかったのです。
しかも猿野が用意した物は、下着が見えるか見えないか位、大きくスリットの入った物。
司馬は猿野からチャイナドレスを受け取り、着替える為に部屋を出る。
改めてドレスをじっくり見ると、着ると言ったことを後悔していた。
ノースリーブだという事は知っていたけれど…。
こんなに横が開いてるなんて知らない。
でも今から嫌だって言っても、絶対許してくれないだろう。
セーラー服やメイドよりはマシ…そう自分に言い聞かせて、司馬はチャイナドレスを着た。

「…出来たよ」

やっぱり赤い顔で出てきた司馬。
歩く度に真っ白な脚がスリットの隙間から覗く。
このとき、猿野の頭に１曲の歌が流れてきた。
『迷うなぁ〜!セクシーなの?キュートなの?どっちが好きなの?』
そう、あややの『ね〜え？』だ
今までがキュートなら今回はセクシーだ!!
あややすまん…。
オレには選べねぇ…むしろ両方食っちまう!!これしかねぇ!!
両方大好きだー!!!!

「葵ちゃん、何でそんなに似合うんだよっ!?」
「そんな事…言われても…」

司馬を座らせると、スリットから脚がのぞく猿野はそこから目が離せない。

「どこ…見てんのっ」
猿野のエロい目線に気付いたのか、司馬は睨む。

「脚」

悪びれる様子もなく、猿野は即答する。

「……」

それにはもう、司馬も呆れるしか無かった。

「つーか、脚にオレがこの前つけたキスマークが残ってて、なんかヤらしいな〜」
「えっ!?」
「肌白いから余計目立つし」
「バカっ!!」

司馬が猿野を蹴り飛ばそうと、脚を猿野に向けると、脚を掴まれ引き寄せられた。

「一応言っとくけど、こんなことしたくなるのは…葵ちゃんの事が好きでたまんねーからだからなっ」

猿野の言葉に司馬は、満面の笑みで答える。

「…わかってるよ。僕だって…天国じゃなきゃ…こんな事しない」

猿野は司馬のサングラスを外し、キスをした。
さっきの言葉が余程嬉しかったらしく、顔のニヤけが止まらない。
司馬の顔もずっと緩んだまま。
そして、目を合わすともっと嬉しい。

「葵ちゃん、やっぱ片言の日本語喋って?」
「ワタシ…天国…好キ」
「可愛いー。ちょっとうさんくせーけど…」
「言えって言ったの…そっちじゃん」

(コスプレにちょっとハマってきたなんて…言えない)

「ちょっと乗り気になって来たのか?」
「違っ」
「動揺したから図星だな。そうかそうか、安心しろ!!まだナースもスッチーもある!!」
「だから…んっ」
猿野は、司馬の唇を塞ぎ、ドレスを脱がせ、耳元で、

「オレ無しじゃ居られねぇカラダにしてやるよ」

と囁いた。

「もう…なってるよ」

その答えに、猿野はオレこそ葵ちゃん無しじゃ居られねぇ、と実感したのだった。



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これで猿馬着せ替え葵ちゃん３部作(？)は終わりです
ですが、ナースやらスッチーは、他の人がお相手で書いてます
コスプレにハマったのは司馬くんではなく、西川のようです…

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