着せ替え葵ちゃん6
[花火やっから今すぐオレん家来い]
「相変わらず、勝手だなぁ」
司馬は御柳からのメールにそう呟きながらも内心嬉しそうに御柳家へ向かう。
司馬はこれから何が起こるのか知るはずがないのだから、それも当然だ。
今日、御柳家には御柳芭唐一人しか居ない事も、ドアを開けた瞬間浴衣姿の御柳がニヤニヤ笑いながら女物の浴衣を広げて待っている事も、勿論司馬は知る由もない。
ただ純粋に花火を楽しみにしている司馬の期待を、御柳はやはりあっけなく打ち崩すのだった。
"ピンポーン"
「お、来たか」
「おじゃましま…何これ…!?」
「花火といったら浴衣っしょ?」
「女物じゃん…」
ドアを閉め、帰ろうとする司馬を、御柳は慌てて追い掛け、家の中へ連れ戻す。
「いいか?攻めが受けの浴衣姿に萌えねーと夏じゃねーーんだよ!!」
「もう秋だよ…」
「オレの気分は夏なんだよ」
司馬のツッコミも虚しく、年中頭の中が常夏の御柳は早速司馬を脱がしにかかる。
「ちょ…バカ…変態っ…」
「わかってんよ。そんな事とっくに」
Tシャツを脱がそうとするが、司馬が暴れるため、脱がせられない。
「これな〜んだ」
そう言って御柳が取り出したのは、巫女装束を着た司馬の写真。
「録先パイに頼んで携帯の待ち受けとパソコンのデスクトップ用の写真作って貰っちまおっかな〜」
「だめっ…絶っっっ対ダメー!!」
「じゃ、おとなしく着替えて下サイ♪」
「…………」
脅迫だ。
司馬はそんな言葉が脳裏に浮かんだが、おとなしく着れば、楽しい花火が出来るんだ、と自分に言い聞かせ、その言葉に従った。
勿論、御柳の事だから写真はとっくに待ち受け画面にもデスクトップにもしているし、今日だって花火だけで終るはずはないのだが…。
それでも司馬はまだ、信じていた。
「綺麗だったね」
花火は途中、御柳が司馬をからかって花火を持って追い掛け回したのを除けば、無事に終った。
花火は合宿の時もしたけど、やっぱり好きな人とするのは違うもんだなぁ、なんて満足気に笑う司馬とは違い、こっからが本番だ!と御柳は一人気合いを入れていた。
「今日は…楽しかった。ありがとう」
笑顔でそう言い、着替えようとする司馬の手を、御柳は妖しく掴む。
「これだけで帰らせるワケ、ないっしょ?」
「え?うわっ」
御柳は司馬を抱きかかえると、奥の部屋へと連れてゆく。
襖を開くと、意味有り気に敷かれた一つの布団。
「質問、今日オレは何のために葵を呼んだでしょう?」
「花火するため?」
「ブー、こっからがメインイベントです」
御柳はゆっくり司馬を下ろす。
「オレ、今からお代官様だから、そう呼べや」
その時の御柳の笑顔は本当に悪代官のようだったという。
そして司馬の返事も聞かずに浴衣の帯に手をかけた。
「何っ…するの?」
「何って、定番のアレしかないっしょ」
わからない、とでも言うように、司馬は首を傾げる。
「絶っっ対あ〜れ〜って言えよ?」
「……っ」
それで司馬は全てを悟った。
司馬は逃げようとしたが、帯を掴まれている為動けない。
「はなしてよっ…」
「どこに逃げんだよ?」
襖の前には御柳が立ちはだかり、部屋には他の出入り口も、窓の一つもない。
「いーじゃねぇか、減るもんじゃあるまいし」
しかし司馬は、断固として首を縦にふらない。
「まぁいーわ。葵、バンザイしろ」
「え?…うん」
すると御柳は思い切り帯の先を引っ張った。
「ちょ…やぁっ…だ…バカ…芭唐っ…」
司馬はくるくる回ってその場にこてんとこけた。
「あ〜れ〜って言えや!!」
「バカぁ!!言えるワケないじゃん!!」
真っ赤になって叫ぶ司馬。
「つか、そのカッコ、エロいな…」
御柳の視線の先には、はだけた浴衣から覗く真っ白な肌と、下着。
「どこ…見てんのっ…」
司馬は慌てて浴衣で前を隠す。
「どーせ脱いじまうんんだからよ、隠す必要ねーっしょ」
「…脱がないよっ」
「つーか、着物が乱れてっと、普通の服が乱れてんのより断然そそる…」
御柳は座っている司馬の元へ近寄り、しゃがんで目線を合わす。
「可愛い」
「可愛く…ないよ」
うつむく司馬のサングラスを外し、顎を掴み強引に視線を合わせる<。BR>
「昔の人は、こーやって目ぇ合わすのは、裸になるより恥ずかしい事だったんだってよ。葵も普段目隠してっから、同じようなモンなんじゃね?」
御柳が真っ直ぐ見つめたまま問うが、司馬は何も言わない。
いや、恐らく何も言えないのだろう。
サングラス無しの状態で、こんなに近くで好きな人に見つめられているのだから。
その証拠に司馬の頬は真っ赤に染まり、行き場のない視線がキョロキョロと動く。
「ちゃんと目ぇ合わせろや」
御柳は浴衣の隙間から手を差し入れ、熱くなった素肌に触れた。
「あ……」
敏感になっている司馬の身体。
「やぁ…ぁんっ…」
胸をまさぐると、自己主張をする小さな飾りに手が触れた途端、甘い声が洩れる
。勿論御柳がそれを聞き逃すはずがない。
「ココがイイんっしょ?」
今尚、御柳は右手で司馬の顎を掴み、視線を合わせたまま尋ねる。
(ふるふるっ)
懸命に首を振る司馬…だったが、
「ひゃ…あ、んっ」
再び触れると、また声が洩れた。
「やっぱ、カワイイ」
(ふるふるっ)
しかし司馬は、何度も何度も首を振る。
「やぁ…あんっ…。も…やだぁ…」
真っ赤な頬とうっすら浮かぶ涙が御柳の本能を高ぶらせる。
「我慢の限界だわ…」
御柳は司馬をその場に押し倒す。
「今夜は花火たっぷり見せてやんよ」
司馬の耳元で妖しく囁く。
「え?」
「たっぷりイカせてやんよ」
そう言って御柳は司馬に口付けた。
御柳は司馬の浴衣を脱がしながら、どうやってお代官様と呼ばせるか、と知恵を絞っていた。
もう既になすがままの司馬は御柳からの誘いを受けるのは慎重にしよう、と決意するのだが、やっぱりその決意はすぐに無駄になるのだった。
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