着せ替え葵ちゃん7



「あっおいー」

司馬は、野生の本能で何かを察知した。
ヤケに機嫌の良い御柳わざとらしく後ろにまわし、何かを隠し持っているような手。

「嫌だ」
「まだ何も言ってねーっしょ!!」
「だって…絶対ロクな事じゃないもん」

司馬の読みは、当たっていた。
御柳が後ろに持っているのはナース服。
これで新米ナースと患者ごっこをしようとする寸法である。
御柳はジャーン!!とでも言いたげに笑顔でそれを司馬に見せたが、

「明日…どこ行く?僕CDが見たいんだけど…」

司馬はスルーした。

「って無視かよオイ!!」
「だって芭唐、いっつも嘘吐くじゃん!!」

御柳は着せるだけ、と言っておいて、いつもそれだけじゃ終らないので、司馬が怒るのも無理はないのである。

「じゃあ、嘘吐かなきゃいーんっしょ?」
(こく)

司馬は、あまり深く考えずに頷いた後で、しまったと思った。
ニヤっと笑う御柳。

「じゃあオレと、新米ナースと患者ごっこしましょうや。勿論、嫌とは言わせねーぜ?」
「……」

敵わない。
何故、こういう事に関しては、こんなに悪知恵が働くんだろう…。
司馬はそんな事を考えつつ、渋々小さく頷いた。

「よっしゃ、じゃ葵、早速着替えろや」
「う…うん」
「あ、ちょっと待て、外で着替えてノックしてから入って来てくんね?」
「…わかった」

御柳の頭の中には、既に台本が出来上がっているようである。
御柳がベッドに寝転び、しばらくすると、コンコンと小さくノックの音がした。

「失礼します」

ドアが開き御柳の前に現れたのは、ピンクのナース服に着替え、初めて穿いたスカートに落ち着かなくモジモジする司馬の姿。
か…可愛い〜。
真っ白な肌に赤く染まった頬には、ピンクがよく似合う。

「ぷっ…ゆがんでっぞ」

御柳は司馬のナースキャップを直してやり、再びベッドに戻る。

「具合は…どう…ですか?」
「元気過ぎて困ってんすよねー葵サン、セクシーだし?カラダで鎮めてくんねーっすかね?」

御柳はそう言って司馬の腿を指でなぞった。

「ちょっ…困ります」

律儀に役に徹する司馬。

「何か勘違いしてねーっすか?葵サンがカワイーからドキドキして眠れないって言いたかったんすよ?」
「っ………」

言葉巧みに司馬をからかう御柳。
いちいち赤くなったり言葉を詰まらせる司馬が、可愛くて仕方のない様子。

「検温して下サイよ、検・温」

御柳は司馬に体温計を渡し、首まできっちり止めた御柳のボタンを外す司馬を、満足気に眺める。
3つ目のボタンを外した所で手を司馬は止めた。
御柳はその手を引っ張り、反対の手で司馬の頭を押さえ、口付けた。

「んぅっ…」

長い長いキス。
カタン、と音がして、司馬の手から体温計が落ちる。
唇を離すと、はぁ、と苦しそうな吐息が漏れた。
しかし御柳は再び口付ける。
司馬の足からは力が抜け、ベッドに寄りかかる様な格好になる。
唇を離すと顔を赤くしトロンとした表情で御柳を見つめる。

「葵サン?具合悪いんすか?何ならオレ、元気にしてあげてもいーっすよ?」

そう言って御柳は、自分の上に居る司馬の胸を服の上からゆっくりと撫でた。

「ばっ…何っ…いいっ…よ…具合…悪く…ないです…から」
「本当っすか〜?そんなに顔赤いのに?」
「これはっ…」

司馬はそこで言葉を詰まらせた。

「これは…何っすか?」

芭唐のキスが気持ち良かったから、だなんて司馬は口が裂けても言えないだろう。
しかし、具合が悪い、などと言おう物なら、何をされるかわからない。

「………」

「ど〜したんすか?教えて下サイよ♪」

司馬がそんな理由で悩んでいるのも、勿論御柳はお見通しである。
「出来れば行動で教えてくんね?」

「〜〜〜」

司馬はもう、どうすればいいのかわからなくなってしまった。
これは飽くまでも新米ナースと患者ごっこであり、御柳の言葉はただの患者からのセクハラだ。
新米ナース葵サンは軽く受け流せば良かったのだが、そんな対応は既に頭に無いらしい。
そして司馬は、御柳の足と足の間に膝をつき必死に深く深く口付けた。
そして唇を離し、御柳の足の間にぺたんと座り込んだ司馬は、しばらくして我に返った。
動転する司馬の頭を、御柳は起き上がり優しく撫でる。

「激しい治療、アリガトさん」

御柳の言葉に司馬は更に赤面する。

「あの…さっきのは…忘…れ…て?」
「忘れられるワケね〜っしょあんな葵からの熱烈なキッス。つまり、オレのキスが良かったっつー事?」
(こくん)

司馬はもう、諦めて頷いた。
その姿はあまりに可愛くて可愛くて、御柳はもう、堪らなかった。

「葵サン…オレもう不治の病だわ…」
「え!?どっ…どうしたんですかっ!?」
「恋の病っつーの?これもう葵サンとヤるしか治んね〜」

司馬は、本気で心配してしまった事を後悔した。

「芭唐なんか…知らないっ」

御柳は、ベッドから降りようとする司馬の手を掴んだ。

「行かせねーよ」

御柳は司馬を押し倒しスカートの下から手を入れる。

「やっぱスカートだと楽だな〜」

「ちょ…やめ…芭唐っ…」

もう既に新米ナースと患者ごっこの事など忘れている2人は、それからたっぷり女装プレイを楽しんだのだった(司馬は不本意)。



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