この声が枯れても


どれだけ呼べばいい?
どれだけ叫べばいい?
喉を枯らしたって伝わらない思いならばいっそ。
届かない声ならばいっそ。
もう声なんて要らない。
感情も要らない。
求められない存在なら生きていたって意味が無いのだ、きっと。

「総悟知らねェか?」
「さっき庭の方で見ましたよ」

今日も、俺じゃない名前ばかりを呼ぶ副長は、俺じゃない人を探している。
いつだって副長の眼は、沖田隊長が好きだと痛い程に言っている。
俺の眼もきっと、俺には気付かない所で副長が好きだと言っているのだろう。

「ふくちょ……、あっ、そこはだ……めです、って。や、あ……ん」

それを利用する副長も、利用される俺も、みんなみんな馬鹿だ。
乱暴に抱かれて満足して、副長が俺を見ていないことに気付いた時にはもう、遅かった。
戻れないほど好きになっていた。
代わりなのだと、割り切ることが出来れば、楽だったのかもしれない。

「副長、ふく、ちょ……! 副長……」

だけど俺は叫び続けた。
この眼で声で、好きだと伝えた。
沖田隊長を見つめる副長の眼が、俺の心に刺さった。
その眼は、俺になど向けられたことのないような優しい視線だった。
積み上げていた何かが、一瞬にして壊れた。
この声は届かなかった。
心の声は枯れ切っていた。
空虚でささくれた俺の心に、冷たい風がひゅうと吹いた。
副長、と呼べなくなればいいのにと、呼んでしまいそうになる喉が無気力に祈っていた。
この声が枯れてもきっと。
俺は呼んでしまうだろう。
心で叫んでいるんだろう。
誰にも届くことない言葉を。









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