個人授業
「先生、わかんねィとこ教えてくだせェ」 教科書とノートを抱えた沖田が、前をぼんやりと歩いていた銀八を呼び止めると、銀八は面倒くさそうに振り返った。 「何?」 「わかんねェとこを……」 「あーそんなの自分で考えなさい。銀さん忙しいの」 「皆さーんここに給料泥棒がいまーす。生徒の質問に答えてくれやせーん」 「ちょ……わかった。いい子だから、やめなさい」 いきなりどこからか拡声器を持って叫び出した沖田をどうにか押さえ、銀八は小さく溜め息を吐いた。 「で、どこがわかんねーの? 俺だってそんな専門的なとこまではわかんねーぞ?」 「アンタそれでも教師ですかィ?」 そんなことを喋りつつ、二人はすぐ傍にあった空き教室へ入り、沖田は早速教科書を開く。 右から2番目の一番後ろに沖田。 その前に銀八。 銀八は横向きに椅子に座り、半身を捻って後ろの沖田に顔を向けた。 「全部わかんねェんでさァ」 「は?」 考えもしなかった沖田の返事に、銀八の肘は思わずずるっと机から落ちる。 「全部わかんねェだと? オイオイ、お前授業中何聞いてたんだよ」 「わっかんねェんですかィ?」 沖田はずずいっと銀八に顔を近づけ、悪戯に笑う。 「先生のこと、見てやした」 更に突拍子な沖田の言葉に、せっかく立て直した銀八の肘は再び机の上から落ちる。 「嘘吐け。銀さんちゃーんと知ってんだぞ、お前がほぼ毎時間寝てたってこたァ」 「あ、バレてやした?」 てへ、とでも言いたげな沖田に小さく溜め息を吐き、銀八は教科書を指差した。 「まず、4ページ開け」 「へ?」 腐った魚のような目だった銀八の目が、きらりと光る。 やはり銀八も腐っても教師。 目の前に居る馬鹿な生徒を放っては置けなかったのだ。 「安心しろ。俺が手取り足取り腰取りじーっくり教えてやらァ」 「お、俺、用事思い出したんで、帰りやす……」 すくっと立ち上がり、荷物をまとめて教室を出ようとする沖田の手を掴み、銀八はにやりと笑う。 「先生の授業はしつこいぞー」 「そんなネチっこそうな授業嫌でさァ!」 ちょっとからかうつもりが、最悪の事態になってしまった、と沖田は心の中で深く反省した。 そしてこれから毎日部活の後、沖田はみっちり銀八に扱かれるのだった。 ++++++++++ 次はシリアスな銀沖3Zパロが書きたい。
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