困難製造装置沖田1号(試作品)


沖田の手が、すぅっと山崎に伸びれば、山崎はそれを愛おしそうに掴んで頬に寄せた。

「知ってます? あなたはいつだっておれを困らせて、それでいて嬉しくて堪らなくさせること」
「そんなのわからないでさァ」
「わからなくたって、いいんです。おれが勝手に思ってるだけですから」

畳の上に寝転がる沖田を見つめながら、山崎はふっと微笑んで掴んだままの手を更に強く握った。

「じゃあ、山崎は知ってやすか?」
「何がですか?」
「俺がアンタを困らせるのは、山崎を土方さんのとこに行かせないようにするためだって」

沖田はいつもの声より少し小さく、しかしそれでもはっきりと言葉を紡いだ後、掴まれていた手を振り払い、すねるように山崎に背を向けた。

「仕事なんだから、仕方ないでしょう」
「でも、気にくわねぇもんは気にくわねィんでさァ」
「ほら、またそうやっておれを困らせますよね」

山崎は離されてしまった手を再び取り、沖田を起こして引き寄せると軽く抱き締めた。

「まぁ、そんなとこが好きだったりするんですけど、ね」
「な、何言ってるんでさァ」

沖田は山崎の腕の中でもぞもぞと動き回り、どうにか目を反らそうと必死になって足掻く。
すると呆気なく緩んだ山崎の腕に、沖田が拍子抜けしたような視線を送ると、山崎は少し困ったように微笑んだ。

「おれがこの手を離しても、沖田隊長はおれの傍に居てくれるんですか?」

淋しそうに呟いた山崎の言葉に、沖田は少々いらつきながら返事を返す。

「は? 何言ってんでィ」
「いつも、不安なんです。沖田隊長はいつかおれの前から消えてってしまう気がする」

山崎は恐る恐る手を伸ばし、畳の上に置かれている沖田の手を取った。
しかし沖田は握り返すこともせず、虚空を見つめて呟いた。

「勝手なこと言わないでくだせェ。俺はどこにも行く気なんかないのに。俺のことが好きなら、どこにも行かせないようにすればいいでしょう」
「そんなこと……っ」
「不安なのは、俺だって同じでさァ」

沖田は山崎の手をようやく握り返し、淋しそうな目をして小さく笑った。
山崎は、全てを察して申し訳無さそうに顔を伏せる。

「おれも、同じくらい沖田隊長を困らせれてますか?」
「まだまだ、甘いですねィ」

沖田の言葉に顔を上げた山崎は、沖田と目を合わせてふふふ、と笑った。

「さて、土方さんでも困らせに行きやすか?」
「そうすると結局巡り巡っておれが困ることになるんですよ!」
「二人を困らせれるなんて、血が騒ぎまさァ」

ようやくいつもの悪戯っこの目に戻った沖田に、山崎はやれやれ、と小さく溜め息を吐いた。

「困らせるのはおれだけにしてください」
「極度のMなんですねィ」
「それとこれとはっ……!」

山崎は、既に困らされている現状に苦笑しつつも跳ねるように立ち上がった。
繋がれたままの手を見ると、溢れそうな幸せが山崎の身体を包む。

「マヨネーズでも隠しますか?」
「やっぱり、まだまだ甘いですねィ」

やっぱり沖田には適わない、と思いつつも山崎は気持ちだけは引き分けだからいいか、などと思いつつ沖田の後を追いかけていった。









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前書いた困難改善装置ミヤナギ1号ってタイトルをちょっと変えてみました(手抜きともいう
最近マジでさがるくんが愛しい。





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