あなたの口癖
「こんのクソ犬!」 「うるせーんだよ。とりあえず死んでくれ」 また出た、犬飼の「とりあえず」 僕は誰にもばれないようにくすりと笑うとまた、犬飼を見た。 喧嘩の時も、辰羅川くんと喋ってる時も、勿論、僕と居ると時も。 犬飼はいつも、とりあえずだ。 「僕のこと、すき?」 部活が終わり、いつものように犬飼は僕の家へ寄る。 僕は意地悪をして、答えに詰まる質問をしてみた。 ソファーに深く腰掛けて、くつろいでいた犬飼は、僕の質問に飛び上がって驚いて、眼を見開いて僕を見た。 僕は、小さく口を尖らせて犬飼から眼を反らした。 「好きだ」 アレ? 求めていた言葉がない。 期待してた言葉がない。 ねぇ犬飼、とりあえず、は? 「どうして、とりあえずがないの?」 「司馬好きなのは、とりあえずじゃねーもん」 僕は肘をついていたソファーの手すりからずるっと滑り落ちた。 予想外の言葉は慣れてない。 予想外の幸せには慣れてない。 顔が、耳まで赤くなっているのがわかる。 犬飼が、そんな僕見て笑ってるのも、わかる。 「何、それ」 「何って、言葉通りの意味だけど」 余裕げな犬飼が何だかむかついたから、僕はとりあえず、笑って言った。 「とりあえず、ありがとう」 「とりあえず、どういたしまして」 震える声で発せられた言葉に、犬飼はまた、おかしそうに笑った。
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