ノンフィクション


「頼む、司馬! 今日一日だけ泊めてくれ!!」

部活終了後、兎丸と共に帰ろうとする司馬を引き止めたのは、猿野のそんな一言だった。

「何でシバくんが兄ちゃんなんか泊めなきゃいけないのさ! 僕ですら泊まったことないのにさ……」
「スバガキには聞いてねーだろが。司馬〜オレ今日の朝かーちゃんと喧嘩しちまってよ、帰ってくんなのたれ死ねって言われてんだよ。明日になったら怒りも収まってると思うし、お前ん家、一人暮らしって聞いたし、な? 頼む!」
「だーかーらーダメっ……シバくん?」

思いっきり猿野を睨みつける兎丸を制し、司馬は猿野に微笑みかけた。

「いいよ」
「マジで!? さんきゅー司馬。恩に着るぜ!」



「すっげーこんなとこに一人で住んでんのか? てか何もねーなぁ」

強引に司馬と兎丸の間に入り込み、司馬家まで辿りついた猿野は、開口一番、司馬家の中心でそう叫ぶ。

「広くても、淋しいだけだよ」

謙遜するように小さく首を振る司馬に、猿野はニカっと笑ってぽんぽん、と司馬の肩を叩いた。

「今日はオレが居んじゃねーか」
「そうだね」

二人はふふふ、と笑い合って目を合わせた。
非日常という魔法のかかった日常は、いつも通りの何でもないこと、が何十倍も楽しい。
猿野は何度も、ふざけて司馬を笑わせ、二人は何度も、ジュースで乾杯をした。
司馬家の娯楽の限りで遊びつくした二人は、ようやく寝る支度に取り掛かる。

「司馬ー今日はマジさんきゅな。お礼に、オレにできることあったら何でもするし」

ソファーで寝る猿野のために、掛け布団を運ぶ司馬に、猿野が声を掛ける。

「あ、何でもっつても金はあんまりねーからな!」
「じゃあ、一個だけ」
「あぁ」
「僕を、猿野の……恋人にしてください」

真っ赤な顔をして、持っていた布団に顔を埋める司馬に、猿野の時間が一瞬止まる。

「え……? そんなんでいいのか?」
「へ? そんなん……って?」

猿野は、物凄い勢いで立ち上がり、布団ごと司馬を抱き締める。

「わりぃ、喧嘩はマジだけど、司馬が一人暮らしだからーなんて実は口実」
「え? それ、どういう……」
「オレも司馬が好きだっつてんだよ!」

猿野の言葉に、司馬の手からぽすん、と布団が落ち、二人の距離は更に近付く。

「世界一簡単な頼みだっつの」
「夢、みたい」

未だ、顔を茹でたこのように真っ赤にする司馬を抱き締めたまま、猿野は妖しく微笑む。

「もう、こっちに布団いらねーよな」
「何言……んんっ」

司馬の言葉を遮るように唇を塞げば、司馬はへなへなとその場に座り込んだ。
二人の夜は、まだまだ長い。










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自分のではなく、寮の先輩の実体験ってのが悲しい(つД`)
脚色しまくりましたが。



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