誕生日だからって特別だと思ったら大間違いです。






「土方さん、俺の誕生日プレゼントにひとつ、死んでみやせんかィ?」
「何で俺がテメーの誕生日に死ななきゃなんねーんだよ!!」

沖田が土方の上に馬乗りになり、首に手を添えると、土方はその手を払いのけて起き上がる。
土方の上から降りた沖田は、腕を枕にして畳に仰向けに寝転がった。

「それにしても暑くてかないやせんねェ」
「そうだなァ」
「また、隊服夏バージョンにしちまおうかな」
「お前着てなかっただろーが」

土方が煙草に火を点けると、ゆらゆらと煙が天井へ上ってゆく。
沖田がふわ、と欠伸をしたら、窓から入ってきた風がちりんと風鈴を揺らした。

「誕生日だってのにいつもと同じでつまんねェや」
「仕方ねーだろ。ていうかお前いつまでサボってんだ。仕事しろ」
「今日くらい大目に見て下せェ」
「駄目だ」
「土方さんのケーチ」
「ケチで結構」

言葉の応酬が終わると、ふ、と二人の間に沈黙が訪れる。
土方が二本目の煙草に手を伸ばすと、沖田は立ち上がって土方の隣に腰を降ろした。
煙草をくわえた土方がふう、と煙を吐き出したら、沖田は間髪を入れずに土方にキスをする。

「これで大目に見て下せェ」
「駄目だ。ほら、コレやるからさっさと見廻り行ってこい」

そっぽを向いたまま、沖田の腿の上に土方から小さな小包が投げられる。
視界の隅で赤く染まる土方の顔を確認すると、沖田の顔もつられて赤くなってしまう。

「土方さん、やっぱり死んで下せェ」
「何でだよ!」
「嬉しすぎて、逆にムカつきまさァ」
「素直に喜べ、馬鹿総悟が」

土方が、隣に座る沖田の頭をぐしゃぐしゃと撫でると、沖田の唇が小さく動く。

「ん? 何か言ったか?」

土方は、何となくわかっているにもかかわらず、ニヤニヤしながら沖田に訊ねる。
沖田は、小包を乱暴に隊服のポケットに突っ込むと、勢い良く立ち上がった。

「ありがとうって言ったんでさァ!」

心底悔しい、という表情をする沖田に、土方はしてやったり、とでも言いたげにほくそ笑む。

「見廻り行ってきまさァ」

ばしん、と沖田が襖を閉めて出て行くと、風鈴がちりんと鳴った。

「騒がしいヤツ」

灰が落ちかかっていた煙草を灰皿に擦りつけ、土方が三本目の煙草に火を点けると、外から土方の部屋の窓の方へ回ってきた沖田が、土方にべ、と舌を出した。

「誕生日おめでとう」

窓を開けて土方が伝えると、沖田の顔が真っ赤に染まる。
土方の顔も、つられて赤くなった。







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