サプライズ


「ねぇ芭唐何食べる?」
「チョコ。つーか今はチョコじゃなきゃ口にはいんねー」
「いい加減機嫌直してよ」

付き合い始めて最初のバレンタインデー。
学校が終わってからでいいから、と御柳はどうにか司馬とのデートにこぎつけた。
が、しかし。

「大体さぁ、チョコ欲しいなら言ってくれなきゃわかんないよ」

男である司馬は、御柳との間ではいくら自分が女役だからといって、バレンタインデーにチョコレートを渡す習慣などないわけで。

「サプライズがいいんじゃねーか!」
「だったら貰えないのもサプライズじゃん!」
「そんなのオレは認めねぇ!」

御柳のあまりに気迫のある熱弁に、司馬は仕方がないなぁ、と小さく溜め息を吐く。

「ちょっと、待ってて」

司馬は、何だか少々理不尽な気もしたが、これで御柳の機嫌が直るなら、と辺りを見回し、目に入った店へと走る。
そして急いでチョコを選び、ラッピングを施して貰うとそそくさと店を出る。
もう夜に差し掛かっているというのに、未だ女の子だらけの店内でチョコレートを買い、あまつさえラッピングまでしてもらうだなんて、司馬にとっては羞恥プレイのようなものだったが、この際背に腹は変えられない。
そして、人混みとイルミネーションの中、一人ぽつねんと立っている御柳の元へと急いだ。

「はい。来年は、ちゃんと用意するから。今年はこんんなのでごめんね」

流石に賑わう女の子たちの群れの中には入って行けなかったのか、司馬が選んだチョコレートはお世辞にも可愛いとも美味しそうとも言えない代物。
しかし御柳にはその事実が、愛しくて愛しくて堪らないわけで。

「よっしゃーーーーーーー!!!!!!」

天高く拳を突き上げ、衝動のおもむくままに叫ぶ。
周りの人たちが、御柳を振り返って笑う。

「ちょっと……恥ずかしいからやめてよ! 単純なんだから」

司馬は溜め息を吐きながら呟き、どうにか叫ぶ御柳を止める。
しかし、そんなことを言いながらも、結局司馬もそんな御柳が愛しくて堪らないのだ。







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バレンタイン柳馬。
好きな人からだったらどんなものでも嬉しいんだよってことで。



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