世界の果て


世界の果てでは、いったい何が見えるんだろう。



「あ…っ、は…はぁっ、ああぁっ!」
「総悟くん、痛てーよ」
「旦那が…のが…っ……ねー……すぜ」
「ん? 何って?」
「あっ! は、あっ」

ガリガリと背中についてしまった傷は、まるで何かを描いているような曲線。
銀時が最奥を突けば、呆気なく銀時の腹部に吐精した。
総悟は、そんな自分を許せないのか銀時の視線を避けるように、布団に突っ伏している。

「別に気にするこたァねェ、こんくれーの傷」
「旦那と居ると、調子狂いまさァ」

どことなく噛みあわない会話はいつものこと。
あぁでも今は、そのズレも、狂わされている調子さえもが愛おしい。
総悟はようやく落ち着いたのか、もそもそと起き上がり、ゆっくりと銀時を見た。
とりあえず身に付けた衣類が、互いに乱れていることに少しだけ、笑い合う。

「旦那は、世界の果てには何があると思いやす?」
「一面パフェ的な物で埋め尽くされた楽園…」
「それは旦那の願望でしょうが」

総悟は、自分で出した答えに恍惚の表情を浮かべ始めた銀時にそっと抱きつき、つけてしまった背中の傷に指を這わす。

「そんなの見たこともねーんだから、願望答えるしかねーだろが」
「ま、それもそうですねィ」
「パフェ的なモンもいいが、一面コスプレ総悟くんで占められた楽園も捨てがたいな…」
「何で旦那には楽園って発想しかないんでさァ」

やれやれ、と総悟が一息つけば、銀時の腕が、総悟の背中に回る。
きつく抱き締められて、顔が圧迫されて息苦しい。

「総悟」

突然の呼び捨てに、総悟の身体が小さく跳ねる。

「何ですかィ?」

だけど、飽くまでも冷静に。

「楽園に行くときはお兄さんも連れてきなさいよ」
「楽園じゃねェ。世界の果てでさァ」
「どっちでもいーじゃねェか。総悟くんが居りゃ、何処でも楽園だよ」
「旦那は、食べ物以外でも、甘いモンが好きなんですねィ」
「おまっ…人が恥を忍んで言った台詞にケチつけてんじゃねー」
「ケチなんてつけてやせん、嬉しいって言ってるんでさァ」

背中の傷が熱を持ち、自己主張をするように銀時の背中を痛ませる。
自分の存在を知らせているかのようなそれを、銀時は総悟のようだと思った。

「まーアレだ。世界の果てには、マキロンでも転がってんだろ」
「じゃ、ここが世界の果てってことになりやすね」

総悟は、銀時から離れ、落ちていたマキロンを拾う。

「ちょっと沁みやすが、我慢してくだせェ」
「あーでもこの理屈ならそこら中の薬局が果てってことになるな…痛てててて! 総悟くん、塗り過ぎ!」
「だから沁みるって言ったじゃないですか」
「どうやって回避しろっつーんだよォォォォ!」
「俺だって旦那に怪我させたっていう心の傷を我慢してるんでさ、耐えてくだせェ」
「うん、絶対思ってねーだろそれ」
「思ってやすよ、はい、出来ましたぜ」
「あー、ん? 臭い! 何か服がマキロン臭い!」
「旦那…失敗しちゃいやした」

テヘ★、とでも言いたげな総悟に、世界の果ては行くもんじゃなく、コイツが連れてくるもんだと思いながらも、銀時は総悟の頭をくしゃくしゃと撫でた。

「俺も総悟くんと居るとペースが狂うわ」

あぁでもやっぱり、銀時もその狂うペースが愛おしいのだ。

「狂わせてるんでさァ」

嬉しそうな互いの顔を見れば、何もかもがどうでも良くなった。

世界の果てには一緒に行こう。
一緒に見よう。
例え何があろうとも、二人で居ればそこは楽園。






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どうやら西川は、どうしても銀さんに総悟くん、と呼ばせたいみたいです。




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