戦場に咲く花


強く美しく儚きひとだ、と初めて沖田隊長を見たとき痛烈に感じた。
血を浴びながら先頭に立って戦う様はまさに、戦場に咲く花のようだった。
思えばあの頃から、俺は貴方に恋をしていたのかもしれませんね。

「山崎ィー見て下せェ」
「どうしたんですか?」
「新しいバズーカでさァ。これで土方さんもイチコロ……」
「平和のために使ってください!」

にやり、とバズーカを構えて笑う沖田隊長を、俺は慌てて止める。
俺の言葉に、沖田隊長はしぶしぶと構えたバズーカを
下ろし、縁側に座った。

「冗談でさァ、冗談」
「冗談に聞こえないから怖いんでしょう」

まったく、この人のどこにあんな強さが備わっているのだろう。
わからない。
わからないけれど、そこがおもしろいのかもしれない。

「どうしてそんなに副長の座に?」
「人の価値を計るには、肩書きが一番わかりやすいでしょう? 俺は、怖いんでさァ。自分には何の価値もないんじゃないかって思い知……」
「そんなこと、ないです。少なくとも俺に……いえ、ここに居る皆にとっては」

消えてしまいそうな沖田隊長の着物の裾を、しっかりと掴んだ。
抱き締める勇気なんて、とてもじゃないけど持ち合わせてはいなかった。

「ありがとう、ございやす。でもそれじゃ駄目なんでィ」

そう言って立ち上がった真っ直ぐな沖田隊長の背中が、俺の胸に突き刺さる。
あぁせめて、今だけは俺の。
俺だけの花でいて。

「追い付きてェ人が居る。きっとその人は俺がこんなこと思ってるなんて知らねーんでしょうが」
「それって……」
「行きやしょう。そろそろ怒られまさァ」

副長のことですか、と訊ねようとした声は沖田隊長の声に遮られた。
わかっていたはずなのに、千切れそうに胸が痛んだ。
届くはずないのに、叶うものだと信じていた自分を恥じた。
永久平行線な俺たちの想いはきっと、何処にも辿りつけないのだろうけれど。
それでも俺はただ、この目の前に咲く花が決して枯れることのないように、と願った。
守るだなんて言えない。
だけどせめて。
強くて脆い沖田隊長へ。
通り雨でもいい、貴方を潤せますように。









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