スイーツアンドシガレッツ
最初のキスも、最後のキスも、煙草の味がした。 「旦那の口の中は、砂糖の味しかしないでさァ」 銀時の腕の中で、沖田は小さく呟いた。 「俺は甘いモンがねェと生きてけねーの」 「控えめにしてくだせェ。俺は旦那が居ねェと生きてけねェんですぜ」 飽きるほどの口付けを交わしたあと、沖田は顎に伝う唾液をゆっくりと拭った。 いつか、甘いものを煙草と置き換えて大切な人に言ったことがあるな、と沖田はぼんやり思ったけれど、気付かないフリをした。 どっちにしろ、陳腐な台詞なことに変わりはない。 「嬉しいこと言ってくれるじゃねェか」 しかし、銀時はまんざらでもなかったらしく、嬉しそうに笑うと、沖田を優しく抱き締めた。 チクリ、と、銀時の腕の中で沖田の良心が痛む。 恋人の腕の中で、他の男のことを思い出している。 「どうして、今更」 もう随分前に終わったはずだ。 とっくに吹っ切れて、こうして新しい人と一緒に居るのに。 銀時は、沖田の言葉には気付かなかったらしく、 「総悟くんは本当に可愛いねー。ウチの新八や神楽とは大違いだ」 だなんて、呑気にふざけた口調で呟いた。 「総悟くん、だなんて、やめてくだせェ」 「何で?」 「くすぐったくなりまさァ」 「くすぐったくさせてんだよ」 銀時は沖田の頭を抱え、きつくきつく抱き締めた。 腕の中に居る沖田は、近くに居るのにとても遠いと銀時は思う。 「苦しい」 銀時の胸に顔を押し付けて、沖田は聞こえないように呟く。 「旦那は、ずるいですぜ」 「何でだ」 「俺には旦那しか居ねェのに、旦那は大切なものを、ちゃんと持ってるじゃァないですか」 だから、ずるい。 子どものわがままのようなことを言い出した沖田の頭を、銀時はあやすように撫でる。 「お前だって、居んだろ、ホラ、真せ…」 銀時の出そうとした名前は、沖田の突然の口付けによって遮られた。 「聞きたく、ありやせん。俺だけを、見てくだせぇ」 土方、と今名前を聞いてしまえば泣いてしまいそうだった。 あぁただ、今思い出せるのは煙草の味をした口づけだけ、なのに。 どうしてこんなに、未だ胸を締め付けるんだろう。 あまりに切ない沖田の瞳に、銀時は沖田の心に居るのであろう人物を、恨む。 何の気なしに、口に出そうとしてしまった自分も、恨む。 どうして。 どうして。 「旦那、痛いでさァ」 「あー、すまん」 自分でも気付かない内に、銀時は沖田を強く強く抱き締めていた。 力を緩め、沖田の肩に自分の顎を乗せる。 「総悟」 「何ですかィ?」 「言っとくけど、俺の大切なものの中に、お前もちゃんと入ってんだぞ?」 「わかってまさァ、そんなこと」 「お前の大切なものの中には、俺は入ってねェ訳?」 「俺には、大切なものなんてありやせん」 「オイオイ、こういう時は嘘でも入ってるって言うもんだろが」 「旦那、言ったでしょ、俺は旦那が居ないと生きてけねェんですぜ? 俺の大切な人は、アンタだけでさァ」 口の中に、ふっ、と煙草の記憶が蘇るが、すぐに銀時の口付けで甘い味に変わる。 「オレは旦那の甘い味で、煙草の味を忘れさせて欲しいんでさ」 ゆるゆると銀時の背中に回される沖田の腕。 力強く、沖田を抱き締める銀時の腕。 「旦那が、好きだから」 揺るぎなく心を占める想いが、ふわふわと身体を包む。 「煙草ってお前まさ…」 沖田は、もう一度銀時の唇を塞ぐ。 口いっぱいに広がる甘い味が、沖田の頭を麻痺させる。 「昔の、ことでさァ」 ただ、気まぐれで思い出しただけ。 まだ浮かんだほろ苦い味は、甘い口付けですぐに、消えた。 ++++++++++ ハハハ、意味わかんねぇ。 とりあえず、書きたかったのは、沖田さんは昔、土方さんと付き合ってて、 とっくに忘れて今は、銀さんと付き合ってるんだけど、ふいに思い出して切なくなっちゃった、みたいな(笑) 飽くまでも今は、銀さん一筋なのです。
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||