輸入品
「山崎ィ、コレなんですかィ?」 「あーなんか天人からの輸入品? みたいですよ」 「何に使うもんなんですかねェ」 「さぁ、俺もそこまでは」 「ちょっと、借りて行きまさァ」 「ちょ……駄目ですよ! 沖田たいちょ……」 山崎の制止もむなしく、沖田は怪しげな袋を鷲掴みし、屯所の奥へと消えていった。 好奇心旺盛、サドっ気のある沖田の頭に一番に浮かんだ人物は、勿論奴隷恋人である土方の姿。 飲み薬だということしかわからないそれを飲ませ、どういった効用があるのか調べようといった寸法である。 「ひっじかったさーん」 嬉しそうに部屋の襖を開ける沖田に、土方はぶるり、と身震いをした。 機嫌が良い時の沖田に関わるとロクなことがない、ということを身を持って知っている土方は、少々訝しがりながらも沖田を見た。 「何か用か?」 「お茶飲みやせん?」 ホラ見たことか。 あの中には毒でも入っているに違いない。 大体、沖田が何もなしにお茶を淹れてくれる、だなんてことあるわけがないのだ。 「どうせ毒でも入ってんだろ?」 「そんなの入ってるわけないじゃねィですか! 大体殺すならもっとうまく殺る……ゲフンゲフン」 「聞こえてんぞ」 わざとらしく咳をしてごまかす沖田に、一発喰わせてやろう、と土方は名案を思いついた。 「疑ったりして、悪かったな。せっかくお前が珍しくお茶を淹れてくれたってのに」 「土方……さん?」 土方は、一転して優しい表情を浮かべ、突然の土方の変化にまだ対応できていない沖田の手から湯飲みを取る。 「有り難く飲ませて貰おう」 そして一旦自分の口に入れると、そのまま沖田に口付けた。 「んっ……」 ゴクン。 沖田が飲み込んだ音を確認し、唇を離した土方を、沖田がキッと睨みつける。 「ずるいですぜ!」 「ずるいのはお前だろう。人に怪しげなモン飲ませようとしやがって」 土方が沖田に怒鳴りつけた途端、沖田がその場にがくりと崩れ落ちる。 「そ、総悟!?」 ぐったりと横たわった沖田は、慌てて自分を抱きかかえる土方の頬に手を添える。 「ひ、じかたさん……俺ァもう駄目みたいでさァ……」 「総悟! 総悟!? 総悟オオオオォォォォォ!」 土方の頬に添えられた沖田の手が、ぱたりと床に落ち、沖田はゆっくりと瞳を閉じる。 土方の目から零れ落ちた涙が、沖田の顔を濡らした。 沖田を抱えたまま土方が呆然としていると、ゆっくりと部屋の襖が開いた。 「沖田隊長、これやっぱただのビタミン剤……副長? 何で泣いてるんですか?」 怪しげな袋を持ち、部屋の中へ入ってきた山崎が土方に訊ねれば、土方は慌てて涙を拭う。 「山崎、その薬もしかして総悟が持ち出したりしたか?」 「はい、掴んだまま凄い嬉しそうに走っていきましたけど」 「総悟ォォォォ!!!!」 「ちょ……副長! 落ち着いてください!」 沖田の襟首を掴み、がくがくと揺する土方を、山崎が必死に止める。 はぁはぁ、と息を切らしようやく落ち着いた土方が沖田を見れば、沖田は目を開けてにやり、と笑った。 「あの涙は傑作だったでさァ」 「どうかしたんですか?」 「実はかくかくしかじかで」 「やめろォォォォ!」 「ぷっ」 起き上がった沖田が、山崎に説明をすると、土方の顔が一気に赤くなる。 そんな土方に思わず吹き出した山崎を強引に部屋の外へ出し、土方は沖田と向き合った。 「お前、悪ふざけにも程があるぞ」 「凄い愛を感じちまったんですけど」 「忘れてくれ」 「こんな嬉しいこと、忘れるわけないでさァ」 一杯食わせるはずが、逆に食わされてしまった土方は、こんなことなら最初からおとなしく騙されていた方がマシだった、と深く落胆した。 一方沖田は、思いがけないところで感じてしまった愛に、落ち込む土方の背中を見つめながら、一つ笑った。 ++++++++++ なーんにも考えずに書いたのでこんな不謹慎な話になってしまったことを深くお詫びします。 最近土方沖田コンビに退くんを絡ませるのが大好きです。 土沖でも土山でも山沖でもこの三人が好きです。
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